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連続的な組織の成長を目指して。 学生団体の消えない課題 “引き継ぎ” への挑戦

学生団体の消えない課題、それは毎年組織の中の人が入れ替わることによって「連続的な組織の成長」が阻まれるということ。

NPO法人アイセック・ジャパンの事務局人材管理局で活動する中で、この課題に取り組むことに。それは1600人ものメンバーを抱えるこの組織にとっても、私という1人の人にとっても、大きな挑戦でした。

 

1人でも多くの人がこの記事を読み終わった後に、「自分の想いを誰かに語りたくて仕方ない!」となってくれたら嬉しいです。

 

アイセック・ジャパンを率いる300人の経営層と組織の「引き継ぎ」に向き合う。

事務局の人材管理局として活動してきた4年目。

私は現(=今年度の経営層)から次期(=次年度の経営層)に経営主体を移す、「引き継ぎ」という領域に挑戦することになりました。

NPO法人アイセック・ジャパンでは、年に3回、組織全体の方針を決定する国内総会を開催のため、全国25の委員会から約200名の経営層が東京に集います。

私にとって大きな挑戦だったのは2017年10月に開催された秋期国内総会という、現の経営層と次年度経営層を担うであろう人たちが一挙に300人ほど集まる会期。私はその会期の中で「現の想いを引き出し、次期に想いを伝えきる、そして代が代わりきる3月末まで現次期共に駆け抜けるためのチームを作りきる」という挑戦をしました。

 

学生団体における引き継ぎの課題。それは毎年組織を率いるリーダーが変わることによって、連続的な組織の成長が阻まれてしまうということ。自分が2年間委員会の経営層としてやってきたからこそ、現の経営層と次期の経営層が並走する期間に何をするのか、引き継ぎの重要性をひしひしと感じていたのです。

とはいえ、私が取り組むまでにも「引き継ぎは重要だ!」と言われ続けてきました。しかしながら1600人もの組織において「良い引き継ぎとは何か」は考えられてきませんでした。学生団体のみだけでなく、いろんな組織体において起こっていることなのではないかと思います。その「良い引き継ぎ」を組織として定義し、実際に生み出すことが、私にとって大きな挑戦でした。

 

私がたどり着いた答えは、今までの経営層が描き続けた理想を元に作られた、組織にとっての「良い」を現次期経営層で共に磨き上げることでした。初歩的な業務の引き継ぎはもちろんのこと、経営指標の引き継ぎ、戦略の申し送りなど、引き継ぎと言われる期間において必要になることはたくさんあります。しかし、組織を継続的に発展させるに最も重要なのは、どの場面の意思決定においても軸になる組織にとっての「良い」の基準を現次期で考えることだと私は考えたのです。

 

まずはじめに現の経営層と一緒に考えたのは、各委員会がこれまでどのような想いを元に経営されてきたかということ。各委員会に人形を配りその人形を◯◯委員会くんと名付け、過去3年間の◯◯委員会くんが辿ってきた経験(つまり意思決定)とその経験をとった背景にある組織の価値観をあぶり出すワークショップをします。

人形を配ったのは経営層自身と組織というのを切り離すため。擬人化させることによって組織を客観視することができます。

あとはその想いを3分間のストーリーに落とし込み、次年度経営層にゆっくり伝える時間と伝えやすい雰囲気を作ってあげるだけ。

会場にプロジェクターで、「Journey to the Moon」というアイセック・ジャパンの経営方針を反映させたロケットと月を投影。日常は業務で精一杯になりこのような時間をとることも難しいですが、このような非日常の空間だからこそ実現できた時間だったと思います。

 

「自分たちはどういう想いで組織を、事業を作ってきたのか」

「自分たちはどんな社会を作りたくて、そのために組織と事業をどう発展させていきたいのか」

「現次期チームをどんなチームにしたいのか」

 

私は3日間、これらを問い続けるような会期を作り上げました。

「想いを継承するために最も大切なのは、目の前の人に素直に向き合えるか」これが私が会期の最後に伝えたことでした。いろんな人のプライドや不安、苛立ちが入り混じりやすいのが引き継ぎ期間だと思っています。同じ組織を良くしたい、同じように社会を良くしたい同志なのに、”現”と”次期”という肩書きが邪魔してしまう時もあります。それらを乗り越えることも、また引き継ぎにおいて重要なことだと、この会期を通して伝えたかったのです。

私も”良い”引き継ぎを実践できない1人だった。

私は2年目と3年目の2年間にわたって、アイセック関西学院大学委員会の経営層として組織を動かす立場にいました。合計3回もの引き継ぎを経験してきたにも関わらず、全く良い引き継ぎができたことがありませんでした。それは、まさに前述したように現と次期というただの肩書きに惑わされたり、自分が作りたい組織像や事業像に悪い意味でこだわりすぎ自分たちのやりたい経営をしたりしてしまったからです。前の経営層の話はあまり聞けなかったし、彼らと向き合えなかったと思います。

 

また一方で、引き継いでくれるはずだった先輩方も私たちに本気で向き合ってくれることはなかったと思っています。

「次期は次期だから」その言葉が良い引き継ぎを作り上げる意志を阻害していました。

 

このように私も「連続的に組織を成長させること」ができなかった経営者です。だからこそ、秋期国内総会では今まで積み上げてきた「想いを継承すること」、そしてそのためには「人と向き合うことが大切だ」というメッセージを、今までもこれからもアイセック・ジャパンを引っ張っていく経営層に伝えたかったのです。

 

1人1人が経営者として圧倒的に熱い想いを持つことも必要。

また、私も1人の経営者として、「理想」を描き切ることができなかったと思っています。共に活動した2代の委員長は社会を見据え、理想を語る人たちでした。「お前は理想を描けていない」と、言われ続けたものです。

それがゆえにリーダーとして私ができたことはメンバーのことを最も考え、個々人のやりたいことができる環境を作り出すことでした。個々人のやりたいことを引き出すのみのそのやり方は脆く、組織として共通の目標に魅せることができなかったのはリーダーとしての私に足りない部分だと思いました。

 

組織を経営する立場である経営層が同じ目標を描くための想いを持つことももちろん大事ですが、1人の経営者として1人1人が理想や熱い想いを持つことも大切です。

組織体が持ち続けてきた想いを継承すること、そのために1人1人が経営者として圧倒的に熱い想いを持つことが、組織を連続的に成長させるために必要だと思います。

学生団体の引き継ぎにおいて、想いにこだわり続けた理由。

なぜ私が「想い」にこだわったか。

1つは前述の通り、連続的に組織を成長させるためにはいかなるときも意思決定の軸となる、その想いを継承することが大切だと思ったから

 

実はもう1つ理由があります。

それは、学生団体やNPO法人のような、理想を実現するために活動している組織を形作っているのは「想い」だと思っているからです。

アイセックがアイセックである理由。それは「Peace and Fulfillment of Humankind’s Potential -平和で人々の可能性が最大限発揮された社会の実現」という理念を全世界7万人のメンバーが共通で掲げているからであり、126の国と地域にあるうちのアイセック・ジャパンである理由はセクターを跨いで社会を変えるために行動を起こせる「共創的リーダーシップを持った人材の輩出」にこだわっているからであり、アイセック・ジャパンの中の1つの委員会がその委員会である理由は、またその委員会の想いがあるからです。

 

Vision & Mission - NPO法人アイセック・ジャパン

 

「自分たちだからこそできること」を考え続ける我々だからこそ、その「自分たちだから」というものを作り上げている想いの継承が、学生団体であるアイセックの引き継ぎにおいて最も大切にしなければいけないことだと思いました。

 

 

秋期国内総会を通して、組織の中に「現次期チーム」という言葉が流行るようになったり、委員会の中でも想いの継承を意識した時間を積極的に取っているとの声があがってくるようになりました。

連続的に組織に続く想いを大事にする組織に、着実に変わってきていると思います。

想いを語り続けられる人でありたい。

この経験を通して私自身も、自分の想いを周りに語り続けたいと思いました。

私は「あったかい心に溢れた社会を作りたい、そのために食の分配を果たしていく」ことを人生のミッションとして掲げています。美味しい食べ物を食べたら自然とあったかい心になります。しかし現在の社会には食べ物を得られずに死んで行く人がいる一方で、大量に捨てられている現状があります。そのような食のアンバランスを解消することによって、1人でも多くの人に美味しい食べ物を届け、あったかい心にすることが私が人生をかけて成し遂げたいことです。

 

この理想や想いを元に、事業の立ち上げや5年後には起業をしたいと思っています。共に組織を作り上げる仲間に対して伝え続けるのはもちろんのこと、私が経営者の立場を退くときに次の経営者に引き継ぐためにも、引き継ぎの時期だから実践するのではなく、自分の想いを常に口に出して発信したいと思うようになりました。

 

今まではちょっぴりこっぱずかしく、理想を語ることに抵抗があったりしました。しかし秋期国内総会から2ヶ月後、ブログを立ち上げて自分の想いを発信する場を作ったり、SNSをうまく活用したり工夫を始めました。初めて会う人にも自分の理想や想いを語り、フィードバックをもらってさらにブラッシュアップしていく。これがすごく大切な作業だと思っています。今となっては、初めましての人でもブログやSNSで私の発信を見て共感し連絡してくれる人もでてきています。

 

ワタシ×タベル=タベモノガタリ🍙

 

人に想いを伝えるのってすごく難しい。恥ずかしさやプライドが邪魔したり、伝えようと思っても自分の想いをちゃんと言語化することができなかったり、否定されたらどうしようっていう恐怖にかられたり。

それでも想いはその人らしさを作り出し、その想いがたくさんの人に伝わり、何年も続いていくことによって社会は本当に変わるのではないかと思っています。

学生団体の消えない課題 ”引き継ぎ” への挑戦は、私自身にとっても想いの大切さを再度気づかせてくれた、人生の中でとても大きな挑戦でした。

竹下友里絵

竹下友里絵

世界の「食のアンバランス」を解決し、「あったかい心に溢れた社会」を作り出すことを人生の志としている。大学1~2年は関西学院大学総合政策学部にて学び、3年次編入にて神戸大学農学部に入学。4年目を休学・上京し、NPO法人アイセック・ジャパンで活動しながら、食品流通の世明けを目指すデイブレイク株式会社にてインターンシップをする。

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