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「なんちゃって人事にはなりたくない。」 “再現性のある成長”に向き合って見えた1つの解

「人の成長を確度高く実現するためにはどうしていくべきなのか、という問いに向き合い続けた5年間でした」

「データは研ぎ澄まされた人間の勘や直感に勝る事はないが、

少なくともそれに最も近い代替はデータである」

これは僕が5年間活動する中で見えた、1つの真理です。


人材輩出団体であるアイセックで5年間でぶち当たった最大の課題。

それは、「人の成長に再現性がないこと」でした。

同じ組織で同じ活動をしてもそれを受け取る側や、それを提供する側が違えば「成長」に再現性がなく、確実なものではありません。人の成長を確度高く実現するためにはどうしていくべきなのか、という問いに向き合い続けた5年間について記述しました。

これを読んだ人には、「人の成長」というものに考えを巡らせてもらえれば幸いです。


再現性のある成長を実現させるために

僕の5年間のアイセック活動の中で一貫して目指してきていたのは、「再現性のある成長を実現させる」ことでした。

アイセックは、崇高な組織ビジョンである「Peace & Fulfilment’s of humankind’s Potential」という社会を目指し「人材輩出」というアプローチをとっています。そして、人材輩出の手段として学生向けの海外インターンシップ事業を行っています。(詳しくはこちら ▶︎http://www.aiesec.jp/about-aiesec )


人の成長は偶然か

 そんな「人材輩出」のプラットフォームであるべきアイセック内部でさえ、人を育て、社会に輩出するための仕組みがあまり整っているとは言えず、外部の学生はおろか内部の学生(メンバー)さえも確率高く育てることができていません。


 もちろん、実際に社会に出てから自身の志や夢に向かって活躍する先輩方や、リーダーシップを発揮して社会を牽引している方も多くいらっしゃいますが、その数は一部にすぎず、必ずしもみんながアイセックから出て行く時にそのようなリーダーであるとは言えません。


なぜ、同じ組織、同じ活動をしていても同じような成長を実現できていないのでしょうか?

言い換えるとアイセックの中での成長に「再現性」が無いのはなぜでしょうか?


5年目の活動は昔から感じていた”問い”に対して本気で向き合った1年でした。

2018年度アイセック・ジャパン事務局人材管理担当のメンバー

(2018年度アイセック・ジャパン事務局人材管理担当のメンバー)

5年目のアイセック活動として行った事は大きく分けて3つあります。


1つ目が、組織の今を知るための「組織の人材データを整備すること

2つ目が、「次の経営者向けに行った合宿運営

3つ目が、成長を再現するための「リーダーシップを定量化すること


この3つの行動は、僕が考えるアイセックの中で「成長」に再現性を持たせるために必要だと思っていたものです。

簡単に言うと、「どういう人」に「どういう経験」を与えれば、「どういう変化が起きるか」を収集、測定、分析するために必要なデータや仮説を検証するための1年でした。


1.「組織の人材データを整備すること」

 まずはじめに取り掛かったことは、アイセックの内部で実際に活動しているメンバーの情報を回収し、蓄積すること。

僕が事務局で活動を始めたときに驚いたのは、1600人ものメンバーが所属しているのにも関わらず、彼らの情報、例えば学年、性別などをはじめとする基礎情報から、志向性、動機付け要因(アイセックに何を求めて活動しているのか)、今までどんな経験をしてきたのか等を管理する事ができていませんでした。人を育てる、成長させるといっても今の状況がわからないと何から着手するべきかもわかりませんね。

そのために、25ある大学委員会から4半期に1度会員名簿を回収し、事務局で一括管理する事や、メンバーに「会員番号」を付与することで、他のサーベイ、人事データと紐付ける事ができるように整備しました。


2.「次の経営者向けに行った合宿運営(経験を作る)」


次に、昨年の6月、9月に次(2018年度)の委員会幹部を希望するメンバー向けに2つのセミナー、合宿を開催しました。

詳細は、【開催報告】次年度経営層育成合宿〜Summer National Leadership Development Seminar2017〜を参照ください。


 これらの機会の運営にあたって考えなければならない、「どのようなセッションを行うべきか」「何を学んで帰ってもらうべきか」などを決めていく際にも上記で挙げたデータ、サーベイの回答を参考にしていきました。


3.「リーダーシップを定量化すること」


 そして、最後に「リーダーシップ」を定量的に測定できるアセスメントツールを作成しました。

アイセックの中では、もっとも重要な要素として「リーダーシップ」を掲げています。


 しかし、一般的に「リーダーシップ」は漠然的であり、明確には定義できないことから「自分らしく生きる」ことがリーダーシップという風に捉われがちです。アイセックでは「Leadership Quality」という4つの大項目、14つの小項目に分かれているリーダーシップの定義がされていました。

(アイセックが定義するLeadership Qualityの4つの項目)


「Leadership Quality」は今まで対面での対話を等して測定されていましたが、時間やコスト、精度を考えると課題は多くあったため、誰でも簡単に自分の「Leadership」のレベルを知る事のできる媒体を作成しました。


 現在はまだプロトタイプにすぎませんが、今後精度も向上すれば、アイセックメンバーがどのような経験を積めば良いか、リーダーシップが磨かれるかを明確にすることができると考えています。


これが僕が目指していた「成長の再現性」を実現する上で重要な要素でした。

僕が再現性のある成長を目指すようになったわけ

再現性のある成長の実現に向けて僕が奮闘したのは、過去の4年間の自分の経験に理由があります。それは、2013年にアイセックに入会してからの人の成長と向き合う経験でした。


人の成長を考える難しさ(1年目〜2年目)

 1年目は日本の学生を海外の企業やNGO/NPOに送り出す事業部のメンバーとして、海外インターンシップ参加生のサポートを行うマネージャーを行いましたが、僕自身未熟で「誰かの成長」を考える前に自分の成長が必要であると感じました。


 2年目は、プロジェクトリーダーとして、当時共に活動していた5人のメンバーの成長を考える立場として活動しました。

(当時のプロジェクトリーダーの仲間との写真)

1年目に学んだことや、経験を生かしてメンバーの成長を考え、彼らにアイセック内の経験を勧めたり、プロジェクトのミーティングなどで経験を提供しました。しかしながら、実際に目に見える成長をした人もいれば、そうでは無い人もいる。まるで確率ゲームのような1年だったと思っています。


成長に再現性を持たせる難しさ(3年目〜4年目)

 3年目は、関西学院大学委員会の人材管理事部統括として、50人のメンバーの成長を考える立ち位置でした。


 その際にアイセックの中で用いられた概念が「Outer Journey」と「Inner Journey」というものでした。

簡単に言うとOuter Journeyはどんな「経験」を積んでいくか、Inner Journyは内面でどう経験を嚙み砕くを表しています。


例えば、「留学」という「経験」からは、確かに英語や異文化を理解する力を身につけることができます。それに加えて、留学前や留学後にしっかりと目標を立て、振り返ることができれば、その経験はさらに深みのあるものになり、成長の幅も広がりますね。


1,2年目はただ単に「経験」していく事が重要であり、それに盲目になっていた僕にとっては「Inner Journey」という発想はあまり着目していませんでした。



とくに、「Inner Journey」では、自身の「なりたい像」を明確に定めたり、経験に対する「内省」を行うことをさしますが、3年目はそれに時間を割きました。この3年目の経験を生かして、4年目はインドで海外インターンシップに参加し、そこで同僚に何かを教えるという場がありましたが、その際もできるだけこの「Journey」の概念を用いることを意識しました。

「外面での経験」×「内面での経験」=「成長」という確かな方程式に確信する事ができましたが、最後に残った課題こそ「再現性」でした。


直接と人を育てたいのであれば、彼らの現在地を知り、彼らの目標を定め、彼らに適切な経験を積ませる事ができる。

しかし、それでは様々なメンバーに対して個別具体的に対応する必要があり時間や、それを行うことができる人の能力にも限界があり、属人的で再現性のない「成長」となってしまいます。


アイセックに所属するメンバーが誰でも、成長したい方向に成長できるためには、「客観的に自分を知り」「目標を定め」「その時々に必要な経験を積む」事です。


そして、それを可能にする一つの答えとして、できるだけ人の成長や人材に関する情報をデータとして蓄積、活用し、応用する事だと考え、5年目は先ほどあげた活動を行いました。


5年間の経験からわかった1つの答え


データは研ぎ澄まされた人間の勘や直感に勝る事はないが、

少なくともそれに最も近い代替はデータである。

この言葉はアイセック5年間活動する中で見えた1つの答えです。


確かに、データは統計や確率での事実でしかなく、事「人の成長」に焦点を当てた時に「データで全て解決する」訳ではなく、1人1人と向き合い続ける事がもっとも大切だと思います。


ただし、そのデータこそアイセックの中で長く培われた宝、軌跡である事も間違いはなく、100人の中で99人が成長した経験はおそらく「いい経験」だし、ほとんどの人がその経験を積めば「成長」につながるのでしょう。


だからこそ、データを無視した人事は、「なんちゃって人事」になるし、「人が成長する”奇跡をただ待つだけ”の人事」になり、人材輩出団体としての人事であってはならないと考えています。


「個人がやりたい事に向き合い、その重なり合わせが新しい価値を生む社会」

最後に自分が目指している社会について言及したいと思います。


「個人がやりたい事に向き合い、その重なり合わせが新しい価値を生む社会」


そんな社会を2年生の頃から思い描いています。


比較的アイセックのメンバーの多くは、ある程度自分の理想とかやりたい事を描いているとは思いますが、世間の大学生はあまりそうではないと感じますし、そもそも自分のやりたい事に向かうためには障壁が多すぎて、真摯に向き合う事ができない人も多いと思います。


「評価経済」に代表される「個」の台頭の時代へと急速に進んでいる事、それを叶えるためのAI、ロボット等の技術がどんどんと開発されていることからも人が自分のやりたい事だけに向き合える社会に近づいていることでしょう。


だからこそ、「1人1人が自分のやりたい事を見つける」ことができる環境を提供してくれたアイセックには感謝しますし、今後自分が社会に出ても、アイセックで学んだ経験や夢、理想を叶えるために1歩づつ前に進んでいきたいと思います。


西原 啓太

西原 啓太

2013年度に関西学院大学総合政策学部へ入学。 大学では計量経営学 / 統計 / 社会調査を学び、転職市場における人的資源価値を研究している。 アイセック・ジャパンで3年間活動したのちに、大学4年次には、インド進出企業のサポートを行うFormula Groupのニューデリー本社にてジャパンデスクのメンバーとしてインターン。5年次には、アイセック・ジャパン事務局人材管理担当として活動した。

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