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“More money, more lives we can save” 命を救う”お金”の話【海外インターン体験記】【連載1】【インド】京都大学4年 鈴木航介

こんにちは!

インドのがん治療・予防・社会復帰支援の活動をするNGOでインターンシップに参加している京都大学4回生の鈴木航介です。

今回はNGOが取り組む課題とそこでの僕の挑戦をご紹介します。




『私たちには治療費が払えません』

国際的に、一日の収入が$1.90を下回る人々は極度貧困層とされています。そしてインドは100人中約20人が極度貧困層とカウントされる国です。家族にがんが発症しても「私たちには治療費が払えません」と言って病院に診察を受けられない人が珍しくないのです。僕はそんな人々に治療費を支給するためのファンドで働いています。僕が働くIndian Cancer Society(以下ICS)は、がんの予防・治療・リハビリの支援活動をするNGOです。中でもCancer Cure Fund (以下CCF)と呼ばれる部署では企業や銀行からの募金を集めファンドを形成し、貧困層のがん患者に治療費支援を行なっています。

“More money, more lives we can save”

この部署の活動目標はとてもシンプルです。


Indian Cancer Societyの外観です


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どうすればもっと支援金が集まるのか

初めてこの部署の説明を聞いた時に素晴らしい事業だと思いました。それと同時に大きくふたつの改善できるポイントがあるとも感じました。

 ひとつはお金の入り口を増やすことです。現状、財閥企業とメガバンクからの支援でファンドは大きく成り立っています。しかし、インドの人口規模や英語で発信できることを考えると、広く世界中の”一般の人々”から集めることも可能だと感じました。

 ふたつめは発信のチャネルを増やすことです。ICSは発信系統が手薄で、HPはしっかりしているものの、内製メディアは持たず、SNSはFacebookが辛うじて機能しているというところでした。したがって、一部寄付金の支援者はいるものの古参者だけに限定されている状態でした。こちらから発信により働きかけていくところに可能性を感じました。


なかなか更新されないFacebookページ。フォロワーも決して多くないです。


なぜ治療できないのか

CCFに来る人々の多くは英語を話せません。職員の人に通訳してもらいながらインタビューをするのですが、まず口から出て来る言葉が「うちの家族では治療費が払えない。だからここに来た。申請が通って本当に感謝している。」という言葉です。しかし、彼らの見た目は決して貧困層と聞いて僕が想像するそれとは違うものなのです。しっかりした洋服も着ています。スマートフォンも持っています。これだけの生活水準の人々でも給付の対象となるくらい、がん治療費貧困の課題の対象層は広いのだと実感しました。

インドの貧困世帯が今も尚、治療費を払えないのには大きく3つの背景があると考えています。

一つ目は日本のような国民皆保険制度が存在していないことです。

少し前にアメリカでオバマケアが話題になりましたが、それと似た状況で、入りたい人が自主的に保険に加入するという社会状況のため、支出を切り詰めたい貧困層はまず加入していません。これによって医療費が拠出できないのです。

二つ目は、経済状況によって利用する病院のランクが露骨に分かれていることです。

インドの病院は大きく三種類に分類されます。世界トップレベルの医療技術を誇る富裕層向けの私立病院。中間層を対象とした私立病院。貧困層を中心に利用される公的医療機関です。がん治療の多くは高度な外科手術や化学療法が必要になるため、私立病院での治療を余儀なくされます。実際、ICSが斡旋する病院もTata Memorial Hospitalという私立病院です。日本のように診療点数で一律に治療費が決まるということではないので、治療の内容によって病院のランクが代わり、そのために治療費が跳ね上がるケースが多いのです。

そして三つ目は、ベーシックインカム(最低保証制度)が存在していないことです。

日本では生活保護と呼ばれているものです。スラムや路上生活者の多くは極度貧困の状態から脱出できずにいます。実際、街のあらゆるスペースに路上生活者がいますし、車の中で信号を待っているだけでもガラスとコンコンと叩いて物乞いしてくる人たちと毎日会います。インドで試験的にベーシックインカムが導入されているケースもあり結果も出ているので大統領の意向としても導入に傾いているようですが、やはりこの人口で2割が貧困層というボリュームを社会保障で救い切るのはまだまだ時間がかかりそうです。


世界最大級のスラム地区に住む子供達です。元気で笑顔ですが裕福ではありません。


どうすればいいのかわかりません


ICSのCCFの治療費支援活動は、いわば最低保証制度のがん治療領域の切り抜きです。がん治療というところに特化させることでボリュームを減らし、寄付金の収益のみで賄える範囲で抑えているから成り立つのです。理想的には全ての人が満足な収入を得て不測の事態にも備えられている状況が理想的です。

しかしそのためには収入源が必要ですし、そのための教育、大前提としての人間らしい生活が必要になります。経済成長率7%を誇るインドでさえ、2割の人々の生活は極度貧困状態なのです。マクロな成長の中でマスが置き去りにされている状態は何か社会の歪みが存在しているのでしょうが、僕にはどうすればいいかわかりません。社会制度や企業努力などの次元の話ではなく、明治維新に近い、人間全体の価値観のアップデートとなるような革命でも起こらない限りこの格差は是正されないのではないかとも感じてしまいます。


だからこそ


この2週間でインドの社会に潜む歪みを少しだけ目の当たりにしました。これをどうやったら解決できるのかはまだ見当もつきません。しかし、だからこそ自分にできることに精一杯取り組んでみようと思います。まずは最初に1週間でがん治療費の支援を世界中から集めるメディアを作ってみました。


https://www.indiancancersociety-curefund.com/

ひとりひとりの患者さんにストーリーがあります。そしてどの患者さんも、ICSのファンドがあったから今笑顔で生活しています。そして、まさに今がんと立ち向かっている人たちがいます。日々その患者さんたちへのインタビューをしているのですが、彼ら/彼女らはとても明るいです。自分の闘いと向き合い未来に強い希望を持っています。そんな人々のストーリーを世界中に発信しながら、世界の善意をどれだけ引き出せるかを残りの4週間で挑戦していきます。ひとりあたりの平均支給額は25万ルピー、日本円にしておよそ40万円です。一介の日本人大学生が何人の命に貢献できるのか。



“More money, more lives we can save”

これは命を救うお金の話。


鈴木航介

鈴木航介

京都大学工学部4年。 2017年度アイセック京都大学委員会委員長。 大学で「ソーシャルビジネス」と触れ、起業に興味を持ち現在エンジニアとして設立準備中。一生を賭けて取り組めるトピックを見つけるために、「何のラベルも持たない自分」で挑戦しようと考え、インドのがん治療・予防・社会復帰支援の活動をするNGOでのインターンシップに参加中。

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